【動きのカガク展】に出品した立体ゾートロープ作品群

「アニメーション作品」といってもそのテイストは多岐にわたります。手描き、CG、実写など。パンタグラフは得意の立体造形を用いて「コマ撮りアニメーション」という手法をよく使うのですが、もう一つの制作アプローチとして立体ゾートロープという昔ながらの手法が存在します。それは「立体物がモニタを通さず目の前で動く」という、実際に見ると誰もが「驚き」の心を突き動かされるものです。生まれてはじめてテレビで絵が動くのを見たときのような感覚を再体験でき、そしてそれは「動く」という要素をシンプルに抽出することができます。「動き=生命」といったことへも飛躍し、様々なテーマを見いだすことにも繋がります。

2015年の夏に21_21 DESIGN SIGHT(東京・六本木)に出品していた立体ゾートロープ、アニメーションアートピースなどを映像にまとめました。たくさんの様々な作品をつくる本当に良い機会になりました。モニタで見るアニメーションとは違った、古くて新しいアニメーション作品群をぜひ改めてご覧いただきたいと思います。


【森のゾートロープ】
この作品は、回転するオブジェを特殊なスコープを通して鑑賞する作品です。テーマは「生命の循環」です。

森や樹木をモチーフにした白いオブジェを天井から吊り、高速回転させます。鑑賞者はそのオブジェの前で、こちらも高速回転する廻る虫眼鏡(スリットスコープ)を通してオブジェを観ます。するとオブジェの回転運動がピタリと止まり、しかも全体が生きているようにウジャウジャと動き出します。ゾートロープやアニメーションの原理を利用したインスタレーションです。

ゾートロープというと、スリットの入った黒い筒状のものを廻し平面や立体が動き出すという映像遊戯装置をイメージしますが、現代でもそのイメージは変わっていません。いまだにあのアンティークな形が連想されます。「映像」はそれから映画、テレビ、スマホなど発展を続けていますが、現代におけるゾートロープがもしあるとしたら、このような形のものがあっても良いのかも知れません。「生命の輪」という意味を持つゾートロープ。我々なりの古くて新しい映像遊戯装置を通して映像と生命、循環の融合を感じてもらいたいと思います。

 

 


【ストロボの雨をあるく】
この作品は、図形が描かれた「傘」を鑑賞者が手で廻し、映像の仕組みを体感できるインタラクティブ作品です。

傘の表面には驚き盤(フェナキスティスコープ)の原理を用いた動く平面図形が印刷されています。連続したストロボフラッシュが焚かれた空間でそれを廻すと、周りの風景が動き出します。絵柄のオブジェがその場で留まったまま動いたり、前進、後退、放射状、メタモルフォーゼなど様々な動きへ変換されます。我々の世界では様々な動きや仕組みがありますが、それは元を辿れば電子から銀河まで、全ては回転運動の上に成り立っているもの、ということも感じさせてくれます。そして、雨、雪、海、空、宇宙など、こことは別の場所へワープできる傘とも言えます。

また鑑賞者はそれを手で廻すことによって、それがどうして動き出すのか、速く廻すと、遅く廻すと、逆回転させるとどうなるか、映像の仕組みをダイレクトに学習できる作品です。いまは日常で映像を見ない日はありません。昨今ではスマホなどのガジェットがそれを加速させています。そういう時代だからこそ、映像の最もプリミティブでインタラクティブな体験を提供したいと考えています。

 

 

 

【アニメーションアートピース】
展覧会で作品に盛り込めなかったメッセージやアイデアを、アートグッズにして販売しました。「展示」とはまた違ったアプローチで鑑賞者に手にとって見てもらえるのが、我々には大変新鮮でした。

 

少しだけですがメイキングもご覧ください!

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『森のゾートロープ』は緻密に計算された枝を機械で切り出して行きます。

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逆さ吊りにして組み立て。

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どれだけデジタルファブリケーションが発達しても
手作業は必要です。

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巨大な円盤を切り出し、ホールソーで正確に穴をあけていきます。

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誤差があるとアニメーションに支障が出ます。

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市販の傘を使って毎日実験です。

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柄も素材も試行錯誤。

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この初期型はなんとストロボがなくても鏡越しにアニメーション
が見られます。またの機会に作品化しましょう。

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グッズもアトリエで作っています。
機械で切り出したら…

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丁寧に1個ずつスミ入れ作業!
会期中、売り切れてしまって生産が追いつきませんでしたm(_ _)m

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ワークショップも大盛況!
子供達の発想力には驚かされました。

INOUE

【月夜のでんしんばしら】宮沢賢治 ─ メイキングその1

NHKのテレビ番組「80年後のKENJI」で月夜のでんしんばしらというお話を映像化しました。パングラ3人とアルバイトさんで2~3ヶ月かけています。曲も歌もメンバーによるもの。パングラ得意の“手作りの味”大爆発です。もっと人数を増やしてチームを組めよ! と突っ込みが入りそうですが、このやり方が僕らの性に合っているんでしょう。


でんしんばしらは昔ながらの木製。実際に木でつくりました。
間接のハリガネがモロ見えでしたが、それでいいんです。


電線にくっついている絶縁体の碍子(がいし)もスカルピーで一つ一つ作ります。


長期間練った電機総長のデザイン。この作品は絵本が何冊も出ているのですが、
幻である電機総長の解釈はどれも個性的で面白いです。


なかなかパンタらしい総長が出来上がりました。


電機総長が背負っているパンタグラフ。意外にもつくったのは初めてです。


人形造形はいつも通りヨシタケ式。名前は恭一です。
賢治の実体験を元に作られたお話だと言われています。


作品によって関節パーツの作り方は全然変わります。


服飾もヨシタケ製。各所にハリガネが入っていて
ゆらぎなどの動きが表現できます。


電線は実際にハリガネを張っている物もありますが、ほとんどPC上で
合成したものです。コレが大変だった。。。やまつん、ありがとう。


行軍のムービーをたくさん見て動きを研究しました。国によって行進
のスタイルが違っていて面白いです。それから「歩く」という行為自体
が面白いですね。ちなみに、行進は一歩前進する間に頭がぴょこぴょこと
二回も上に上がります。


回想シーンはテイストをガラリと変えています。


音楽はもちろん、東神奈川のモーツァルト・たくと氏。


声は舞台俳優さんたちにお願いしてみました。
素晴らしい演技をありがとうございました!

INOUE

パンタグラフ制作のGoogleプロモーションムービー、3作品が受賞!

ニューヨークの国際広告祭・DAVEY AWARDSにて、昨年の3作品に続き受賞作が多数出ました!

★金賞! Google AdWords Express
★金賞! インドア Google マップ
★銀賞! Panoramio

またもやGoogle広告ばかり。これだけ偏ってて良いこととは思えませんがw、貴重な経験をさせてもらってるので他の作品にも活かしたい。もっと作らせてください。連絡待ってます。

広告やってると“商業でしょ?”と言われることも。が、その制約の中でオリジナリティを発揮したり発見することも少なからずあります。またその商品を通して社会と直結していてなかなか面白い作業だと感じています。しかし場合によっては、大きな声では言えませんがクライアントの言い分ばかりも聞いていられません。激しい駆け引きもあります。そもそも商業という括りって……という長くなりそうな話は置いておいてw(また商業作品とオリジナル作品についてのトークイベントなどもやりましょう)ムービーとメイキング改めてご覧下さい。ちなみに今回も音楽はすべて江口拓人作。そろそろパングラミュージックアルバムができるな〜


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昨年の受賞記事はコチラです。

INOUE

インドア Google マップ プロモーションムービー

Google マップ・新サービスのプロモーションムービーを制作。
制作期間がかなり限られていたので、コピペを利用して広大なジオラマを表現することに。
予想どおりゲームっぽい画面になったわけでありますが、ズームしてよ〜く見ると、やっぱり
手作りの味がほんのりと残っていて、ほどよい質感や触感が伝わってきます。 Webやゲームでも、
もっと手作りオブジェ使いませんか…?

 


最初は手描きでマッピングを試します。
ドラクエや桃鉄、シムシティなどもおおいに参考にしちゃいます。


スタイロカッターを利用して建物らしきオブジェを制作!


光を当てたときに影やハイライトなどのカタチのとっかかりが
見えるようなデザインを目指します。


丸いビルはパイプとライオンボードを使用!
アイデアノートにも載っていない素材。コスプレなんかによく使われているよ。


ムービーの中には、パンタグラフやオーリーズバードがアトリエを
構える、共同アトリエマンション“ADビル”や…


ADビルの前身・宮本ビルも並んでいます。探してみて下さい。
探すほどでもないけど… いっぱい建ってます。


ショップっぽいイメージで建物の中のアイテムも作り込んでいきます。
これらは疑いようもないヨシタケテイスト。


CGで作るよりも断然味があって制作時間も同等か早いくらい。
今、世に出てるグラフィックがもっとこういったものと入れ替わって
いくといいんですが。なぜこんなCGありきの世の中に?


スタイロを切り出して…


エスカレーター!


コマ撮りでちゃんと動きます。


ヨシタケ人形も炸裂です。最近、手・足・首・腰などの新しい間接技法が
定着しつつあります。


まるでアシュラマンのように、いろんな腕を作り貯めます。
指のカタチも様々。


セットと照明を作り込んでいきます。
場合によっては人形の下半身は外してしまいましょう。


こんな天井をつくって…


室内の照明を表現。室内の様子を再現するのはいつも苦労します。


インテリアや家具、建築のちょっとした知識が役立ちます。


スタジオもいいカンジにゴッチャゴチャになってきました。


セットや場面が変わるときは一度スタジオを掃除!
スッキリした気分で仕切り直し。
屋外の場面は意外と照明が必要。久しぶりに6〜7灯で撮りました。
照明では光を当てるのも大事だけど、もっと大事なのはそれらの
光を切ること。反射板や仕切り板をたくさん使おう。


流れる背景を動画撮影で。
セットをレールに乗せ、スピードコントロールモーターで制御。
学生時代の作品や素材は取っておくもんだ…!

INOUE